SMAS face lift 切開フェイスリフト

切開フェイスリフトの【溶ける糸】
vs
【溶けない糸】の話

山口憲昭

「フェイスリフトで、リガメントを剥がしたうえで溶けない糸を用いた手術方法があるようなのですが、持久力がかなり違うのでしょうか?
感染や再手術の際のリスクが気になります。 先生の考え方を教えて下さい」というご質問です。

吸収糸、非吸収糸って話になってくると思うんですけど、これはフェイスリフトのお話の中でサロン限定アカウントで回答してたんですけど、綱引き問題なのか、フェイスリフトの手術は綱引き問題なのかっていうところなんです。
前話してたのは、要は引っ張る力、固定する力の差はなんだとすると、例えば溶ける糸でも1,000本とか入れたらめっちゃ引けるようになるんですかっていうとそんな事ないよねっていう話をしたんですね。

山口憲昭

どういうことかというと、まず剥がさないといけないので、相手側が動きやすくなってるかどうか、例えば綱引きをすることを考えますと、同じ力で引けば当然力がかかる糸のところにストレスがかかるわけですけれども、こっち側が手を離すぐらいユルユルになったら引っ張ったら当然動くやんっていうのが、これが剥離が必要だよ、リガメントをちゃんと外すことが必要だよっていう話ですね。

引っ張るこの力自体はむっちゃおっきな力が必要なのというと、むっちゃおっきな力がかかるような引っ張り方はやっぱり戻ろうとします。ここなんですね、ポイントは、
引っ張る力を強くすれば強くするほど、引き上げ効果がいいのっていうと、そりゃ直後はその方がいいと思いますけど、強く引っ張れば引っ張るほどやっぱり組織というのは戻ろうとする力があるんですよ。

山口憲昭

例えば糸を、溶ける糸を使おうが溶けない糸を使おうが、時期として溶ける糸の場合長くもつやつ、大体200日位もつようなPDS2ってのを使うことが多いんですけど、一番長くもつ溶ける糸ですね。
この2つで引っ張っていて、むっちゃどっちもテンションがかかってますという状態で、溶ける糸だから戻るのか、溶けない糸だから長く引っ張ってるのかというと、実はポイントは糸が溶けたから動くんじゃなくて、組織が裂けるんですよ。

前提としてはさっきの綱引き状態と一緒なんですけど、これがお互いが同じ強さのものだったら引っ張っても同じ状態が維持できるんですけど、片方が緩い状態だったら引っ張ると外れちゃうんですよ。
ということは、どんなに強い糸を使おうが、中で動かしてる組織の方がその糸よりも弱ければ当然裂けてきますよね。
なので溶けない糸を使ってるから絶対に大丈夫だよってことはもちろんないんですよ。

山口憲昭

剥がして動きやすい状況をつくるってのはすごく大事なんですけど、動きやすい状況をつくって留めていく時に、溶けない糸を使ってるから絶対大丈夫やねん溶ける糸を使ってるから絶対あかんねんという話になってくるかというと、実はそうじゃないということなんです。
なので例えばお鼻の中の手術とかでもそうなんですけど、軟骨の固定は溶けない糸でやるんですよっていうふうにやってる先生もいるんですけど、溶ける糸でやるんですよって先生もいて、実は世界のトップクラスの外科医の先生は溶ける糸でやってたりするんですよ。
ここも派閥というか両方あります。

だけどもし溶ける系の施術で世界のトップランカーになれるんだとしたら多分大丈夫なんですよ。
つまりもし問題を起こすんだったらトップランカーになれないからね。
溶けない方を使い続けてる人達は信じ続けてるんですよ、溶けない方が絶対いいと溶ける方を使ってないからこっち(溶ける糸)は知らないんですよ。
溶ける方の人たちは多分溶けない糸を最初使ってたんだけど、途中で溶ける糸に変えたんですね。
なので両方知ってるんですよね。

山口憲昭

ここは歴史の差かなという気はします。 なのでやまぐちとしては溶ける時期、糸の抗張力(こうちょうりょく)と言いますけど、引っ張ってるのを耐えれる時期にしては充分な期間を想定する必要があると思いますが、溶けない糸の方が絶対的に優位かというとそうではないと考えてます。
溶ける糸は無くなるからまあいいんですけど、溶けない糸は他にリスクとかないんですか、再手術の時のって話ありますけど、実はやっぱり溶けない糸の方が瘢痕形成とか強いと言われてて、例えばさっきのお鼻の手術とかで溶けない糸で軟骨を固定してる人なんかそうなんですけど、軟骨にこんな(10円玉くらい)の穴が空いてます。

もう針が通って何年たってもいるので、軟骨にズボッと組織がなくなってしまって穴が空いてるってのはよくあります。
フェイスリフトなんかもそうで、溶けない糸を使って施術をしてる場合、これもフェイスリフトなのか糸のリフトなのかに限らずなんですけども、溶けない糸を使ってると周り瘢痕形成っていって身体が嫌がってるサインがでてるので、嫌がってるサインが強くでてるとこってこの組織はいなくなっちゃってるんです。
溶けてしまってる部分なので、そういう意味でいくと、僕は溶けないものを使うっていうのは、柔らかい組織のうえで溶けないものを使うっていうのは気持ち悪いなと個人的には感じてます。
絶対溶けない糸だから感染がすごい起きるってそんな事はないですよ。

山口憲昭

なかにはナイロン糸っていって溶けないのとか、プロリンっていって安定してる素材もあるし、なのでこれもケースバイケースなんですけど、溶けない糸を使う時ってのはより注意して使うべきだし、ここでご質問があるように、再手術の事までやっぱり考えておかないといけないなというふうに思っています。

以上、フェイスリフトの溶ける糸、溶けない糸についてお話させていただきました。

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    切開フェイスリフトの【溶ける糸】vs【溶けない糸】

    切開フェイスリフトの際に、リガメント(靭帯)を剥がした上で溶けない糸を用いた手術方法があるのですが、溶けない糸を使う場合と、溶ける糸を使った場合の効果の違いはあるのか。溶けない糸の方が強く引き上げられるのではないか。というご質問をいただきます。

    溶ける糸と溶けない糸。

    吸収性の糸か、非吸収性の糸かという話になるのですが、フェイスリフトの手術は引っ張る力の強さが効果の決め手となる訳ではありません。

    フェイスリフトの効果が、糸の力の差だと仮定するならば、 仮に糸を100本入れたら、ものすごく引き上がるのか?これが溶けない糸ならばより効果が長く続きそうだ。と思われるかもしれません。

    切開フェイスリフトに関してはまずSMAS層のリガメント(靭帯)を剥がし、組織が動くことが前提となっている手術なのですが、溶ける糸を大量に入れて、強く引っ張り上げた場合、直後からしばらくは物理的に引き上がっていると感じるでしょうが、強く引っ張れば引っ張るだけ抵抗が生まれて、元に戻ろうとする力も働くのです。

    ここがポイントです。

    ゴムを伸ばすことを想像してください。同じだけの力で引っ張り合っている間は、均等に力が加わりますが、どちらかの力が強い場合は、パッと手が離れて元に戻るか、場合によってはゴムが切れますよね。

    これが組織でも同じで、強く引っ張って負荷をかければかけるほど、元に戻ろうとする力も働く。

    この場合、溶ける糸でも溶けない糸でも、糸自体の力はさほど重要ではありません。

    溶ける糸の場合は、糸が溶けたため支えがなくなって下がったとよく勘違いされていますが、実際は糸が溶けたのではなく、組織が裂けた。

    いわゆるゴムが切れてしまった状態なのですね。

    なので糸自体が影響しているのではなく、組織にかかる力が強ければ強いだけ組織が裂けてしまうのです。

    実際の現場では、溶ける糸(PDSⅡ)と呼ばれる持続効果が約200日ある吸収性の糸を使用することが多いのですが、溶けない糸を使用するドクターもおられます。

    これは派閥のようなものですが、世界のトップ外科医たちは溶ける糸を使用しておられます。

    どちらがいいか、悪いかという話ではなく、もし溶ける糸で問題が起きるなら世界トップのドクターたちが溶ける糸を使用しないでしょう。

    溶ける糸を使用しているドクターは、歴史としては溶けない糸の方が古くからあるため、その知識をそのまま使っているのだと思います。

    溶ける糸を使用しているドクターも、当然溶けない糸を使っていた時期があるのですが、結果、溶ける糸を選択した。ということなのです。

    私個人の意見としては、糸の溶ける時期、抗張力といって耐えれる時期は充分な期間を想定する必要があると思いますが、溶けない糸の方が絶対的に優位かというとそうではないと考えます。

    逆に溶けない糸を使用した施術はフェイスリフトに限らず瘢痕形成のリスクが強いとされていて、瘢痕形成されるとその周りの組織が溶けてなくなってしまったり、穴が空いていることがあるのです。体の防衛本能でしょうね。

    なので私も柔らかい組織の上で溶けない糸を使うことはしておりません。

    溶けない糸は安定している素材もありますし、感染も必ず起きるとかではないですが、溶けない糸を使用する場合はケースバイケースですが注意が必要ではあります。場合によっては再手術のことも考えておく必要があると思います。

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